とにかく一刻も早く実家から出たい、そんな思いが日に日に大きくなっている。
以前の自分であればこのような思いを抱えることはなかっただろう。実家にいれば3食自分で作らなくとも食べられるし、何の準備をしなくとも風呂にはいれるし、食費光熱水道費その他もろもろの費用を支払う必要もない環境に満足していた。
一応家の掃除をしたり、皿を洗ったり、洗濯物を干したりと家事の手伝いもしていたので居心地が悪いと感じることもなかった。
ところがそのような状況が変わったのがセミリタイアを意識してからだった。
僕はセミリタイアとはあらゆることを他人に振り回されることなく、自分の自由な意思で決定できるものと考えている。
だからこそ思ったのだ。今の実家に住んでいる状況は自分の自由な意思決定ができていないと。毎回3食好きなものを食べれるわけではないし、風呂に入る時間も調整しないといけない。
それに家族と過ごす以上ある程度の配慮もしないといけない。自分の部屋は母が寝るときの部屋の隣にある。部屋同士は可動式のブラインドのようなもので遮られているにすぎない。だから光は漏れるし音も丸聞こえになる。
母は家事などのために朝早く、少なくとも5時に起きているようだ。そのため10時頃には部屋に来て寝るようになっている。
僕は母の眠りを妨げないためにも同じように10時に寝なければならないことになる。これが休日なら10時まで時間が充分あるから問題ないが、仕事がある平日は帰ってきてから寝るまでが数時間程度であり、しかもクタクタの状態で食事をとり、風呂に入り、明日の準備をし、歯磨きをし、寝る準備をしなければならないのだ。10時までに済ませようと思えばゆっくり休める時間は30分ほどしかない。
賃貸アパートで独り暮らしならば、音さえ気を付ければ後は何もかも自由だ。夜遅くまで起きていようが、何を食べようが自分の勝手だ。
こんな毎日の暮らしに苛立ちを感じるようになったのだ。以前からこのようなことに多少の不満を持っていたがそれでも実家で暮らすことによる感じるメリットの方が大きかったので実家から出ていくという考えはなかった。
セミリタイアという禁断の果実を知ってしまったからこその悩みともいえるかもしれない。それでもセミリタイアを知れてよかったと思っている。セミリタイアを知らなければ一生苦しみながら会社で働いて一生後悔する人生になっていただろう。
友達がいなかった僕にとって家族は唯一の心の支えだった。しかし今の自分にとって家族は足枷でしかなくなってしまった。これからは誰にも頼らず孤独に生きていく覚悟だ。